第三回「今井兼平(いまいのかねひら)」
富山県教育文化会館開館45周年を記念して上演される音楽朗読劇「凛音×天声」。
本作をよりいっそう楽しんでもらおうと、富山県文化振興財団と江嵜大兄がお送りする公演PR連載。
第三回目にご紹介するのは猛将、今井兼平です。
今井兼平は信濃の豪族、中原兼遠(なかはらかねとお)の四男として生まれました。巴はその妹とされています。
本作「凛音×天声」にも中原兼遠の名前が出てくるので簡単に説明しますと、兼遠は源氏一族の争いにより父を殺された当時2歳の義仲を引き取り、養育した人物です。この兼遠がいなければ幼い義仲は殺される運命にありました。我が子のように義仲を大切に育てようとする兼遠は実の父親以上の存在だったといえるでしょう。
兼遠が治めた木曽谷(長野県木曽郡木曽町)は山林に囲まれた自然豊かな土地であり、幼い義仲たちはその自然の中で共に学び、武技を磨き成長していきました。そして、以仁王の令旨を受け27歳で旗揚げした義仲と共に、兼平は数多の戦場を駆け抜け、粟津の地にて最期の時を迎えるまで義仲を守り戦いました。
勢力争いのため一族同士で殺し合うことも珍しくなかった時代において、義仲と兼平はまさに血よりも濃い絆で結ばれていたのでした。
富山県に残る今井兼平の足跡をご紹介します。
こちらは富山県高岡市にある弓の清水(しょうず)という史跡です。
寿永2年5月、義仲を討伐するため加賀より軍を進め般若野の地で兵を休めていた平家軍に、兼平率いる先遣隊が奇襲をかけ勝利した戦いを『般若野の戦い』といいます。その戦が行われたのがこの場所でした。
般若野の戦いの後、義仲率いる本軍が兼平軍に合流した際に兵たちがあまりに喉の渇きを訴えたため、義仲は地元の農夫に水はないかと尋ねます。すると農夫は義仲の馬の前にひざまずき地面を指して、「ここに清き水がございます」と答えました。そこで義仲が弓を持ち、地面を突くと清水が湧きだしたといいます。そのことから、この地は『弓の清水』と呼ばれるようになりました。この水を飲んで英気を養った義仲軍は倶利伽羅峠の戦いにおいて大勝利を得るのですが、それはまた後の記事でご紹介します。
弓の清水は平成の名水百選に選定されていて、この名水で仕込んだ生地で餡を包んだお菓子が販売されるなど今でも地元の人々に愛されています。
音楽朗読劇 凛音×天声
脚本・演出 : 江嵜大兄
作曲・音楽監督 : furani
Cast : 小林親弘/能登麻美子/新垣樽助/勝 杏里
2019年11月24日(日)
開演15:00(開場14:30)
富山県教育文化会館 ホール
次回は義仲の右筆、覚明をご紹介したいと思います。ご期待ください。