第八回「義仲の足跡」
富山県教育文化会館開館45周年を記念して上演される音楽朗読劇「凛音×天声」。
本作をよりいっそう楽しんでもらおうと富山県文化振興財団と、わたくし江嵜大兄がお送りする公演PR連載も今回で八回目を迎えることになりました。
毎回読んでくださっている皆様、ありがとうございます。残すところあと六回となりましたが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。
さて、今回は「凛音×天声」の作中にもチラッと登場する史跡をご紹介したいと思います。
まずはこちら。
その名も地獄谷。
錆びたガードレールと傾いた立て看板がさらにおどろおどろしい雰囲気を演出しています。
一つ前の記事で俱利伽羅峠の戦いについて説明しましたが、『源平盛衰記』によると
義仲の火牛の計によって慌てふためき、追い立てられた平家軍がこの先に逃げ道があると思い込み、人馬もろとも次々と落ちていったのがこの谷なのです。そして、谷底は無数の死骸で埋め尽くされ、地元ではこの場所を地獄谷と呼ぶようになったそうです。
現在は鬱蒼とした木々に覆われ谷底を見ることはできませんが、当時は急峻な崖だったのでしょうか。
義仲が布陣した場所、平家軍が布陣した場所を説明してもらいながら、当時の戦場を頭の中で再現していきます。
多くの死者を出したことから慰霊碑も建てられています。私には霊感はないのですが、倶利伽羅峠を訪れるたびに肌がひりつくような感覚があります。木々のざわめき以外は聞こえない静かな場所ですが、地獄谷というだけに県内有数の心霊スポットにもなっていますので夜中に訪れないほうがよさそうです。
そして、こちらは膿川。私のすぐ後ろを流れる小川です。
この小川は地獄谷の谷底を流れている川で、おびただしい数の死骸から流れ出た血や膿が流れ込んだことから膿川と呼ばれるようになりました。
俱利伽羅峠は平安末期最大の激戦地となった場所なので、こうした痛ましい過去を伝える史跡が多いのですが、俳聖、松尾芭蕉は奥の細道でこの地を訪れて名句を残しています。
「義仲の 寝覚の山か 月かなし」
義仲の生涯を偲んで詠んだ歌とされています。
芭蕉は自他ともに認める義仲のファンでした。どのぐらいファンだったかというと、
芭蕉は臨終の際、弟子たちに「私の墓は木曽殿の隣に……」と遺言を残して、滋賀県大津市にある義仲寺の義仲の墓の隣に埋葬をお願いしたほどでした。
大阪で亡くなった芭蕉を滋賀まで運んだ弟子たちも苦労したことでしょうが、芭蕉の義仲好きを物語るエピソードですね。
松尾芭蕉や芥川龍之介など、多くの偉人たちに愛された義仲ですが、富山県砺波市にはこんな史跡もあります。
午飯岡『ひるがおか』と読みます。
ここは義仲が昼御飯を食べたと言い伝えられている場所です。昼食をとっただけの場所が史跡になるなんて……。それほど民衆に愛されていた武将なのでしょう。
さて、富山県に伝わる史跡をご紹介してきましたが、次回は義仲に関連するお祭り「源平火牛まつり」をご紹介します。
藁でできた火牛を引いてタイムを競う「火牛の計レース」などが開催されますよ!
音楽朗読劇 凛音×天声
脚本・演出 : 江嵜大兄
作曲・音楽監督 : furani
Cast : 小林親弘/能登麻美子/新垣樽助/勝 杏里
2019年11月24日(日)
開演15:00(開場14:30)
富山県教育文化会館 ホール